国が「子連れ出勤」を推奨!?仕事や子どもへの影響はどうなる

公開:2019.01.19 更新:2019.01.19

宮腰光寛少子化担当相が“子どもと一緒に仕事をする「子連れ出勤」を政府として後押しする考えを表明”してからはや数日…。しかし、SNSでは賛否の声が鳴り止まない状況です。

自治体向けの地域少子化対策重点推進交付金の補助率を、従来の2分の1から3分の2に引き上げる方針などのニュースが流れていますが、そもそも「子連れ出勤」とはどんな内容なのでしょうか?

メリットやデメリット、実際に行っているのはどんな会社なのかなど、詳しく説明していきます。

そもそも子連れ出勤とは

一般的な企業では、子どもが1歳になるまで、保育園に入れないなどの要件を満たしている場合には1歳6カ月まで、育児休業が認められています。

しかし、育児休業中に保育園が見つからなかったり、子どもの預け先が確保できなかったりという理由で働きたくても働けないと悩む女性が多いのが実情です。

また、企業内に託児所を設置できる会社が多ければいいのですが、費用面や人材面で実現できない場合もあります。

子どもが小さくて働けない女性と、人材を確保したい企業のニーズを満たすものとして考えられたのが「子連れ出勤」です。

子連れ出勤のパターンとしては、子どもを会社の中にある子ども用スペースに預けるケースと、親が仕事をしている空間に子どもが一緒にいるケースがあります。この記事では社内に託児所がない場合を前提に、話を進めていきます。

子連れ出勤のメリットとデメリット

近年の保育園不足が深刻なので、子連れ出勤は待機児童解消にも役立つと期待されています。

しかし、実際に子どもを職場に連れていくとなると、仕事面はもちろん、周りのスタッフの目も気になるところですよね。

子連れ出勤のメリットとデメリットを比べてみました

子連れ出勤のメリット

ママ・パパのメリット

・子どもの預け先や保育園などを確保できる
子連れ出勤最大のメリットと言えばコレ!待機児童問題や、預け先が確保できずに働けないという問題をクリアできます。

・子どもを送迎する負担を軽減できる
認可保育園の保育時間は、保育を必要とする事由や保護者の状況に応じて決められています。

保育園はパートタイムであれば8時間、フルタイムであれば11時間が基本になります。勤務先から保育園の場所が遠ければ、パート時間や勤務時間を短くしなければいけない場合も多いです。

子連れ出勤であれば、送迎時間がないので負担を軽減できます。

・勤務事情や子どもの事情に対応してもらえる
子どもは不意に熱を出したり、ケガをしたりするものです。37.5度以上の熱が出ると、迎えにくるように言われることも多くあります。

また、保育園のルールとして、熱が出ている子どもを預かることができないとしていますが、親が見れば「このぐらいなら大丈夫」という見極めもできます。

子どもが近くにいる場合、突発的な問題が起こったとしても状況を判断し、仕事の対応や引継ぎもスムーズです。

会社のメリット

・女性社員の離職率を下げることができる
前にお伝えした通り、育児休業中に保育園や預け先が見つからず、退職することになってしまったという女性は多くいます。

子連れ出勤を認めることで、女性社員の職場復帰の機会を増やし、離職率を下げることができます。

・子どもと触れ合う機会が増え、職場の雰囲気が明るくなる
映画界ではよく「どんな名優も子どもと動物には勝てない」などと言われますが、小さな子どもや動物と触れ合うと癒されたり、雰囲気が和んだりと感じるのは、人間の遺伝子に組み込まれているものなのだそう。

・独身者は結婚や出産に前向きになれる。安心できる。
結婚をすれば、その後に妊娠や出産はつきものです。しかしこれだけ保育園に入れないなどの問題が取り沙汰されていると、やはり子どもを持つことに躊躇してしまう女性も少なくありません。

しかし、働いている会社で子連れ出勤を推奨しているのであれば、安心して結婚や出産を考えることができます。

・子どもが産まれても働き続けられる環境があることを多くの求職者へアピールできる
出産や育児で転職を考える女性も多くいます。転職を考えている女性に対し、子連れ出勤OKとアピールすることで、子育てに対して支援体制があること、理解力があることを印象付けられます。

子連れ出勤のデメリット

ママ・パパのデメリット

・満員電車に子どもと乗らなければならない
「満員電車 子供」で検索をすると、迷惑だったり危険だったりという意見しか見られません。子連れは満員電車に乗ると非常識を非難されることが多くあります。

・子どもの遊びが制限される
保育園などと異なり、同じ年代の子どもと触れ合う機会が少なくなり、自由に走り回れず子どものストレスが高まる可能性が高いです。

・給料が減る
子どもが職場内に居る場合、ケアをする時間は仕事をしていない時間になります。

他の職員と公平さを保つため、子連れ出勤者は減額や、オムツ替えや授乳などの子どものケア時間分の給料を減額するなどのルールがあります。

会社のデメリット

・生産効率が低くなる
子どもの声やおもちゃの音などがオフィスに響き渡ると、うるさくて集中できない人もいます。仕事に集中できなくなると、生産性が低くなる可能性があります。

・浸透していないので社内の意見が割れる
子連れ出勤は浸透している制度ではなく、採用している企業の方が稀です。そのため、公私混同すべきではないという意見や、親の都合で子供を会社に連れてくるのは良くないという声も上がります。

また2017年に熊本市の市議会で緒方夕佳議員が生後7ケ月の息子を抱いて議場に入ったところ、議会事務局職員らによる退席要請を受け、結局は友人に預けてから参加したという問題がありました。

日本ではまだまだ、子供連れの出勤は認められない傾向にあるようです。

実際に「子連れ出勤」OKの企業は

前述の通り、社内に託児所などがあるのではなく、親と一緒のスペースで過ごすパターンの「子連れ出勤」を認めている会社をリサーチしてみました。

モーハウス|授乳服制作会社

(画像:モーハウス公式HPより)

先述の宮腰光寛少子化担当相が視察した企業がココ。2002年から子連れ出勤の制度をはじめています。

これまで子連れ出勤を実践した女性スタッフは250人にもなるそうです。

基本的には、子どもが1歳6カ月くらいまでの子どもとスタッフが対象です。母子の体調面を考え、子連れ出勤は1日4時間まで、週2~3日出勤です。

サイボウズ株式会社|グループウェアの開発、販売、運用

(画像:サイボウズ株式会社公式HPより)

2014年より、「学童保育に行きたがらない」や、「子どもの預け先がない」という問題解決のためとして、子連れ出勤を認めている緊急時の受け皿的制度として機能しています。

チームの生産性を下げないなどのルールがあり、乳幼児ではなく、小学生を対象としています。

ソウ・エクスペリエンス株式会社|体験ギフト事業

(画像:ソウ・エクスペリエンス株式会社公式HPより)
子どもの年齢は1~3歳までです。

2018年4月現在では。オフィスに常時いる子どもの数は3~4人、必ず子連れで出勤しているのはパートスタッフ8名、たまに子連れのスタッフはフルタイムスタッフ5名とパートタイムスタッフ2名だそうです。

また、ソウ・エクスペリエンス株式会社では“子連れ出勤は「優しさ」ではなく「厳しさ」ゆえ”としています。スタッフに早く復帰してもらうための、ベンチャー企業のサバイバル術のひとつと捉えています。

ゲンナイ製薬|妊活サプリや妊婦用スキンケア製品の製造・販売

(画像:産経新聞より)
社員8人中4人が子連れ出勤を行っており、女性の職場復帰率100%という会社です。
子連れ出勤はもとより、育児休暇や時短勤務などを積極的に導入し、男性でも育休制度や子連れ出勤を利用しています

SNSの「子連れ出勤」に対する意見は・・・

「#子連れ出勤」でTwitterを検索してみると、どちらかというと否定的な意見が多いようです。

子連れ出勤に関するTwitter上での意見 子連れ出勤に関するTwitter上での意見 子連れ出勤に関するTwitter上での意見 子連れ出勤に関するTwitter上での意見 子連れ出勤に関するTwitter上での意見

なぜこんなにTwitterが荒れているのかというと、子連れ出勤をするのが「ママ(女性)前提」なことです。

宮腰光寛少子化担当相も、赤ちゃんはお母さんと一緒にいるのが何より大切だ。この取り組みがモデルとして全国に広まってほしい。人手不足のなかで、子どもを産み育てやすい環境を作っていくことは企業としても重要」と話しています。

ここに、お父さんの姿は全く見えないですし、どんな仕事でも、どんな企業でも取り入れたらいいみたいな意見に思えるので、不満や不安が続出していると考えられます。

まとめ|ライターあこKの感想も込み

今回は「子連れ出勤」に関してのメリットやデメリット、世論の意見などをまとめてみました。

個人的な意見として「子連れ出勤OKの会社が増えるのはありがたい。しかし、子どもが会社の中で泣きわめいていたら心の中で迷惑だと思ってしまうだろうな」というのが本音です。

政府が支援するのでであれば、単に金額を引き上げるというのではなく、女性専用車両みたいに時間帯によって子ども出勤者専用車両を作るとか、子連れ出勤者は一般社員とは別の部屋で仕事をする環境を作ってあげるとか(みんな子連れならなんとなく安心)、ちゃんとした決まりを作ってほしいなと思います。

今後、この「子連れ出勤」が社会として当たり前になっていくのか、話題になるたびにSNSが炎上するようなことになるのか、これからも注目していきたいと思います。

この記事を書いた人
ママエル編集部
「多くのママが笑えるように、エールを送りたい」という思いからママエルを立ち上げました。 私たちは頑張るママの味方です。

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