小学校中学年から英語教育が本格スタート!新しい英語教育改革とは?

公開:2018.09.27 更新:2018.12.12

小学校の英語教育の内容が、2020年度から変わるのを知っていますか?

子どもには英語に触れる時間をたくさん与えてあげたい、将来少しでも話せるようになってもらいたい、そう願う保護者は多いでしょう。

子どもたちが社会に出るころには、英語は話せて当たり前の時代になっているかもしれません。

ここでは、実際に子どもたちが英語と向かい合うときのために、今回変わる英語教育改革の詳細について、どんな先生が教えてくれるのか、そして英語教育の改革のメリット・デメリットなどを含めて、わかりやすく紹介したいと思います。

英語教育が変更される目的

英語教育改革の背景

グローバル化の進展の中で、国際共通語である英語力の向上は日本の将来にとって極めて重要である。アジアの中でトップクラスの英語力を目指すべき
(引用:文部科学省)

つまり、「グローバル化が進む世界に置いていかれないよう、子どもの頃から英語に慣れ親しんで、英語力をアップさせよう」という背景があるのです。

とくに今までの英語教育では得ることがむずかしかったコミュニケーション能力を向上させるために、英語教育の改革が必要となってきます。

英語教育において、日本人がいちばん不得手とするコミュニケーション能力の育成については、とくに改善を加速しなければならない、重要性の高いポイントとなります。

英語教育改革のゴール

今回変更 される英語教育によって、高校卒業時までに、4つの技能を積極的に使えることをゴールとしています。

4つの技能

聞く…ネイティブの話す英語を、ネイティブの話す自然なスピードで聞き取り、理解する技術

話す…自分の言いたいことを適切な文法を使って文章を作り、イントネーションや感情をつけて相手に伝える技術

読む…目的や場面に応じて、的確に内容を読み取る。そしてその内容をさらに熟考し、利用できる技術

書く…自分で考え、適切な言葉を選び出し、その言葉で文章を作りあげる技術

子どもたちがこれらすべてを使えるようになると考えると、ちょっとワクワクしてきませんか?

今まで私たちが英語教育に触れたときには、あまり考えたことがなかった内容でしょう。

ですが、これからは私たちがしっかりと目的やゴールを理解し、子どもたちの思考力をサポートしていかなくてはなりません。

小学校の英語教育の内容

小学校から英語教育が義務化されると聞くと、他の科目と同じく勉強内容を頭に詰め込んでいかないといけない、と思われがちです。

ですがここは少し考え方を変えて、英語教育は将来必要となるコミュニケーションツールの1つ、そして学校で学ぶのは英語というコミュニケーション能力の習得だと思ってもらえれば、もう少し積極的になれるのではないでしょうか。

では、小学校での英語教育の内容を中学年と高学年に分けてみていきましょう。

中学年(小3〜4年生)

変更内容 これまで高学年からおこなっていた外国語活動を前倒しして、小学3年生から開始
詳細 週1~2コマ、英語を「活動型」として導入する
目的 音声に慣れ親しませながら、コミュニケーション能力を養うため

これまで高学年からおこなっていた外国語活動が早期化され、小学3年生からスタートします。

中学年での英語教育は、週に1〜2コマ「活動型」として導入されます。

活動型は英単語を覚えたり、文法を学んだりするのが目的ではありません。

英語自体に触れることで、相手の話していることをしっかり聞いたり、自分の考えを相手に伝えようとしたりする思考力を身につけていく授業です。

活動型の英語教育では教科書がありませんから、それぞれ担当の指導者が教材を用意し、それぞれのアイディアを詰め込んでカリキュラムが立てられ授業がおこなわれます。

高学年(小5〜6年生)

変更内容 成績が付けられる「教科型」として、小学5年生から英語の授業を導入
※文法を本格的に学ぶのは中学校から
詳細 授業として週2コマ(年間70単位)、モジュール学習※として週1コマ、合計週3コマ確保する
※モジュール学習…10~15分程度の学習形態
評価基準 文章記述による評価や数値等による評価
目的 「聞く・話す」に加えて、「読む・書く」を含めたコミュニケーション能力を養うため

高学年からは、成績がつけられる「教科型」として英語の授業が導入されます。

中学年では、英語に慣れ親しむための活動型だった授業が、教科化された高学年では教科書も用いられ、数値による成績がつくようにもなります。

授業は週に2コマ(年間70単位)、さらにモジュール学習として週1コマの計週3コマになります。

あまり聞きなれない人いるかもしれませんが、モジュール学習とは、10〜15分程度の短時間学習のことです。

朝の始業時間前の10~15分で、計算ドリルや漢字ドリルを取り組んだ覚えはありませんか?これがモジュール学習にあたります。

45分の授業を1コマとしてカウントするため、週1回のモジュール学習をするためには、15分のモジュール学習を週に3回行う必要があります。

週のどこかに1コマを入れ込むよりも、モジュールにして日課にする方が結果的により多くの時間を英語学習に割くことができ、かつ毎日のように繰り返して学べるのです。

どんな先生が教えてくれるの?

文科省のホームページでは〝英語担当教員となる者は、英語力・指導力を高めるとともに、異文化理解・異文化コミュニケーションへの認識を深めることが重要である。〟とあります。

今後、英語を担当される先生たちの採用には、英検準1級、TOEFL iBTスコア80程度以上など、高い英語力が必要とさるようになります。

採用後は、ALT(外国語指導助手)などとのティームティーチングを含む模擬授業、授業視察をおこない、実践的な指導者としての力を身につけていきます。

英語教育の必修化に伴い、先生のスキルもアップしているので、子どもたちがさらに英語を身近に感じ、楽しく慣れ親しめる環境作りをしてくれるのではないかと期待ができそうです。

中学・高校の英語教育の内容

今の大人のほとんどが、中学校から本格的に英語教育が始まったという人がほとんどだと思います。

中学・高校と6年間も英語を勉強し、学習塾にまで通ったのに英語が話せない、ネイティブの話す英語がまったく聞き取れないという人も多かもしれません。

その原因を改善すべく、英語教育改革の変更内容と、今後おこなわれる学習内容をみてみましょう。

中学校

変更内容 週3コマ(105時間)から週4コマ(140時間)へ変更
目的 身近な話題についての理解や表現、簡易な情報交換ができるコミュニケーションを養うため
授業内容 高校では英語で授業がおこなわれるようになるため、それに向けて中学校でも英語で授業をおこなうことを基本とする

中学校での英語教育は、週3コマ(105時間)から週4コマ(140時間)へ、約3割増加されます。

今までの英語授業の内容は、文章の読解やリスニングが重視され、「読む」と「聞く」を中心におこなわれてきました。

いつの間にか、英語がコミュニケーションツルの1つではなく、受験のためのものというイメージになっていたのです。

今回の英語教育の変更により「読む・聞く」に「話す」と「書く」をくわえて4技能をバランス良く学習できるようになりました。

そうすることで、受験のための英語だけではなく、身近な話題について理解したり表現したり、簡易な情報交換ができるためのコミュニケーションを身につけることができるようになります。

さらに、高校では英語の授業が英語でおこなわれるようになるので、その準備として中学校でも英語で授業をおこなうことを基本とします。

高等学校

変更内容 選択必履修から「コミュニケーション英語」という共通必履修へ変更
目的 幅広い話題について、発表・討論・交渉など言語活動を豊富に体験し、情報や考え方などを的確に理解したり適切に伝えたりするコミュニケーション能力を高める
授業内容 授業は英語でおこなうことを基本とする

今までの高校では、必修科目以外で英語を学ぶ機会が「選択型」であったため、音楽・美術・英語・数学などの中から好きな授業を選べました。

しかし2020年度からは、選択授業であった英語が「コミュニケーション英語」という共通必履修へ変更されます。

つまり、これまでは選択授業や選択科目だったため高校で英語を取る生徒と取らない生徒がいましたが、共通必履修にすることで、生徒全員が英語の授業を受けることになるのです。

さらに、授業は英語でおこなうことを基本とすることから、今まで以上の英語の量に触れられるようになります。

実際に高校生の声を調査してみると「新しい単語や文法を頭に入れても(インプット)それを実際に使う(アウトプットする)チャンスがない。」、「できている文章を理解するのはできるけれど、自分の思っていることを伝える力を身に付けたい。ディベートできるようになりたい。」という声も多いので、そのような意欲的な学生にとって有益な改革になることでしょう。(参照:高校生新聞)

2021年(2020年度)から大学入試の内容が変更

英語教育改革がおこなわれるのは小・中・高校だけではありません。

もちろん、大学受験についても内容が変更されます。

大学入試に大きく関わる大学センター試験そして英語の試験について変更内容を紹介しましょう。

大学入試の変更点

大学入試にとって重要視されている、大学入試センター試験は2020年(2019年度)を最後に廃止されます。

そして2021年(2020年度)からは、新たに大学共通テストが開始します。

大学共通テストがおこなわれる時期は、センター試験と同様1月下旬の2日間です。

大学共通テストの詳しい内容はまだ発表されていませんが、英語に関してはいくつかの変更点があります。

英語の変更点

これまでのセンター試験では、「読む・聞く」にとどまり、リスニングとマークシートの筆記のみという試験内容でした。

これからは「読む・聞く」に「話す・書く」の2つが加わり、4技能で評価されるようになります。

評価は4技能になりましたが、試験日は2日間と変わりはないため、この2日間で見切れない技能については、高校の間に受けた4技能評価をおこなっている資格や検定を活用するとされています。

メリット・デメリット

2020年から学校でおこなわれるさまざまな英語教育改革ですが、改革にはメリットやデメリットがつきものです。

将来日本人の誰もが使える英語を身につけるための大切な教育改革ですので、始まる前にメリットとデメリットをしっかり把握して、起こり得る変化に対応できるようにおきましょう。

メリット

小学校中学年から英語を授業で取り入れるにあたり、子どもたちへのメリットはたくさんあります。

中学校での英語につながる

今までは小学校の高学年で英語活動(教科書を使わず、文法などの学習もしない英語の授業)をおこなうのみで、中学校へ入って単語や文法の学習を始めました。

ですが、英語教育改革後は高学年で単語や文法の知識を増やし始めるので、中学校の英語の授業にスムーズに移行できます。

英語を学習する時間が増える

中学・高校の履修時間だけでは、英語を習得するのに時間が足らないのでは?という意見が生徒、保護者ともに多くありました。

小学校中学年から英語学習をスタートすることで、英語に触れる時間が増え、より親しみやすい、身近なものになっていきます。

楽しく学べる=英語が好きになる

小学中学年の段階ではまだ「英語=勉強」というイメージがつく前なので、英語は楽しい1つのコミュニケーションツールとして身につけられます。

ほんの少しのことでも理解できれば楽しい、伝わればうれしい、そんな純粋な気持ちで英語に触れられるので「英語=楽しい・好き」になれるのです。

コミュニケーション能力が上がる

英語教育改革が目指すゴールの1つでもある外国人とのコミュニケーション能力を、小さいうちから英語を身近に感じることで自然と身に付けられます。

小学生の間から外国人や英語に触れておけば、将来外国人を見ても緊張しなくなったり、関わることに抵抗が少なくなったりと、結果英語力だけではなく、表現力やコミュニケーション能力もぐんと上げられます。

デメリット

日本語がおろそかになる

小学校中学年では、まだ母国語の日本語習得は完全なものとは言えません。

そこに外国語学習を入れると、国語の力が低くなってしまうのでは?と心配されている保護者の声もあります。

ですから、ご家庭でしっかりと日本語や日本の大切な文化を伝え、理解し合う時間を持つことが大切になってくるでしょう。

他の教科の授業時間が減る

英語の授業の時間を増やすと、当然ほかの教科の時間が削られてしまいます。

今すぐに必要のない英語よりも、ほかの教科の勉強の方が大事だと思う人もいるかもしれません。

子どもたちの長い将来を見据えてのこの英語教育改革は、新しくグローバル化を広げる反面、ほかの教科でのフォローアップも少なからず必要となってきそうです。

まとめ

2020年度から変わる、日本の英語教育改革について紹介しました。

将来の日本は今よりもっと国際化が進んでいます。

そんな将来のため、国際的共通語である英語の習得はとても大切なもので、どんな環境下の子どもたちにでも必ず身につけてほしい教養の1つです。

この改革で、小さなうちから英語を勉強として捉えるのではなく、人とつながるためのコミュニケーション方法だと思って、楽しく自然に身につけていってもらえたらとても嬉しく思います。

それには、私たち大人も子どもたちと英語の楽しさを一緒に学んでいく必要がありそうですね。

この記事を書いた人
ナオミ
オーストラリア在住。マッサージをこよなく愛する、男児2人の母です。 子どもの言語習得にとても熱く、バイリンガルの育て方を独自に研究しています。

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